第32回 日本安全保障貿易学会 研究大会終了
第32回日本安全保障貿易学会研究大会は、新型コロナウイルスの影響で2021年9月26日(日)にOnlineにて96名の参加者を得て開催された。午前の自由論題セッションは1名の方から、午後のテーマセッションは2セッションを設け報告があった。
■午前の自由論題セッションでは1名の方から報告があった。
小甲 顕史氏から「軍事的戦略物質に係る研究開発および管理体制の変遷についての比較検討-チタン酸バリウム(BaTiO3)を例として」のテーマで報告があった。
軍事戦略的に意義を持つBaTiO3の研究開発/管理体制を調べることで、その国家の技術安全保障戦略を概説することができる。戦後の我が国の技術安全保障戦略を評価し、今後の戦略策定のための参考としていただきたく報告する。
●午後のテーマセッションでは2件のテーマをとりあげた。
●第1セッションでは、「産業構造審議会 通商・貿易分科会 安全保障貿易管理小委員会 中間報告(令和3年6月10日公表)をめぐるパネルディスカッション」と題し、先般産業構造審議会、小委員会の中間報告が発表されたが、これに対しパネリストの方々から活発な討議が行われた。
まず、風木氏より先の産構審中間報告に関する基調講演があった。概要は、Ⅰ.我が国を取り巻く国際情勢、Ⅱ.最新の国際情勢を踏まえた「守る」措置の見直し、Ⅲ.残された問題、に関し説明があり、これに引き続き各パネリストからコメントがあった
(概要のみ)
- (1) 鈴木氏:
経済安全保障には技術不拡散に焦点をあてているが、産業政策に重きを置かなければならない問題もあり、戦略的判断が必要。有志国連合に対してはAUKUSのような排除の仕組みにならない対応が必要。 - (2) 佐藤氏:
有志国連合関しては日本が常に入り続けることが重要。その為には技術の育成に関し政府がコントロールし戦略的な資源の傾斜配分ができるかが重要。また、経済安全保障の面では、軍事技術に対する議論が必要。 - (3) 中谷氏:
人権侵害に対する通商規制はGATTに抵触しても一般国際法上は合法となりうる。但し、企業が板挟みにならない対応を望む。みなし輸出に関しては類型の細部は詰める必要あり。今後の対応として退職者対応、秘密特許制度は検討願いたい - (4) 村山氏:
有志国連合は国際的に認められる正当性を構築し、連合以外の国から報復がやりにくい環境を作ること。有志国間の防衛分野のサプライチェーンを明確化すること。また、有志国連合内で、外資規制を統一すべき。 - (5) 青木氏:
有志国連合では日本が梯子を外されないことが重要。米国の政策転換を許さないような相互監視の仕組みが必要。みなし輸出では管理者の強い支配権が必ずしも期待できない場合が少なくない。産業界、学界に余分な負担を掛けないようにしていただきたい。 - (6) 押田氏:
有志国連合により米国の域外適用抑制に期待。みなし輸出は潜在的懸念が高い相手に絞ったのは良いが、労働・人権・個人情報保護法制等との抵触回避のため、政府横断窓口必要に。人権関連は相手国の対抗措置に対処するためにも、日本政府自身による規制が必要。 - (7) 森本氏(コメンテータ):
「経済安全保障」の定義を明確化したい。また、日本は「軍事技術」の話はあまり出てこないが議論の中心であるべき。さらに、みなし輸出の管理の要点は「入国管理」が中心であるべきではないか。
●2セッションでは、「サプライチェーンの見直し(バイデン政権100日レビューを受けて)」を取り上げた。バイデン政権の100日レビューでは半導体、レアアース、電池、医薬品の4種類のサプライチェーンに関するレビューを行ったが、半導体に関しては前回研究大会で取り上げたため、残る3件に関し議論を行った。
まず清水 孝太郎氏より「レアアース(希土類)の需給動向と今後の展開可能性について」と題しレアアースに関するサプライチェーンの報告があった。希土類(レアアース)の生産量は中国が50%を占めているが、レアアースをめぐるサプライチェーン支配・ルール形成の動きに関し報告があり、ISO/TC298にて持続可能性に注目した新たな市場ルール形成戦略を策定しつつある。
次に佐藤 登氏から「経済安全保障の観点からの車載電池産業における現状と展望」のテーマで車載用電池に関する報告があった。車載電池は今後巨大な市場が期待できる中、中国にシェアを奪われている。更にEU、米国も官民挙げて開発に取り組んでいるが、10年前と比べ、半減している。車載電池の投資、国は直接支援を強く働きかけている。
最後に沼田 佳之氏より「医薬品の原料調達と安定供給に向けた課題」と題し報告があった。医薬品は海外で中間製品を輸入し、日本国内で精製する例が多い。輸入先は中国、インドでほぼ半数を占めるが、COVID-19の影響により中間製品が輸入できない事象が起きた。医薬品も戦略物資としての面が表面化し、サプライチェーンの複数化など、①供給不安を予防するための取組、②供給不安の兆候をいち早く捕捉し早期対応に繋げるための取組、を進めており、その概要を紹介した。
今回は、自由論題セッションで1件、テーマセッションで「産業構造審議会 通商・貿易分科会 安全保障貿易管理小委員会 中間報告(令和3年6月10日公表)をめぐるパネルディスカッション」、及び、「サプライチェーンの見直し((バイデン政権100日レビューを受けて」の二つのテーマをとりあげた。今回もオンラインでの学会開催であったが、多数の参加者に聴講いただいた。
自由論題、セッションともにそれぞれ興味深いテーマが報告され、特にテーマセッションのテーマは現時点で最も関心の高いテーマであり、多くの側面からの分析が報告された。フロアからも活発な質問・意見が出され有益な研究大会であった。
2021年11月
日本安全保障貿易学会 会長 鈴木 一人
日本安全保障貿易学会 第32回 研究大会プログラム
日時:2021年 9月26日(日)
11:00~12:00 自由論題セッション
(12:45~13:00 第17回総会)
13:00~14:45 第1セッション
15:00~17:00 第2セッション
大会形態:Webex meetingsによるOnline会議
■午前 自由論題セッション 11:00~12:00
- 報告者:小甲 顕史氏
(東京工業大学 環"境・社会理工学院 イノベーション研究科 後期博士課程学生)
「軍事的戦略物質に係る研究開発および管理体制の変遷についての比較検討
- チタン酸バリウム(BaTiO3)を例として」 - 司会討論者:佐藤 丙午氏(拓殖大学(貿易学会 副会長))
■テーマセッション
●第1セッション:<産業構造審議会 通商・貿易分科会 安全保障貿易管理小委員会 中間報告
(令和3年6月10日公表)をめぐるパネルディスカッション> 13:00~14:45
- 1)パネリスト
① 基調講演:
経済産業省 貿易経済協力局 貿易管理部長 兼 経済安全保障政策統括調整官 風木 淳氏
② 鈴木 一人氏(東京大学)
③ 佐藤 丙午氏(拓殖大学)
④ 中谷 和弘(東京大学)
⑤ 村山 裕三氏(同志社大学)
⑥ 青木 節子氏(慶應義塾大学)
⑦ 押田 努氏(CISTEC - (2)司会:高野 順一氏(日本輸出管理研究所)
コメンテータ:森本 正崇氏(慶應義塾大学)
●第2セッション <米国の投資規制に関して> 15:00~17:00
- (1)報告者:清水 孝太郎氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)
「レアアース(希土類)の需給動向と今後の展開可能性について」 - (2) 報告者:佐藤 登氏(名古屋大学)
「経済安全保障の観点からの車載電池産業における現状と展望」 - (3)報告者:沼田 佳之氏(医療系メディア 月刊「ミクス」編集長)
「医薬品の原料調達と安定供給に向けた課題」 - (4)司会討論者:橋本 弘二氏(日本機械輸出組合)
■午前 自由論題セッション


小甲 顕史氏 「軍事的戦略物質に係る研究開発および管理体制の変遷についての比較検討-チタン酸バリウム(BaTiO3)を例として」
司会討論者:佐藤 丙午氏
● 第1セッション:<産業構造審議会 通商・貿易分科会 安全保障貿易管理小委員会 中間奉告(令和3年6月10日公表)をめぐるパネルディスカッション>


基調講演:風木 淳氏(経済産業省)
コメンテータ
鈴木 一人氏(東京大学)
佐藤 丙午氏(拓殖大学)
中谷 和弘氏(東京大学)
村山 裕三氏(同志社大学)
青木 節子氏(慶應義塾大学)
押田 努氏(CISTEC)

鈴木 一人氏 佐藤 丙午氏 中谷 和弘氏

村山 裕三氏 青木 節子氏 押田 努氏

司会:高野 順一氏 コメンテータ:森本 正崇氏
●第2セッション:<サプライチェーンの見直し((バイデン政権100日レビューを受けて>


清水 孝太郎氏「レアアース(希土類)の需給動向と今後の展開可能性について」


佐藤 登氏 「経済安全保障の観点からの車載電池産業における現状と展望」


沼田 佳之氏「医薬品の原料調達と安定供給に向けた課題」

司会討論者:橋本 弘二氏